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| グリム童話/ カエルの王様 ある日、美しい姫が金のマリで遊んでいると、それを森の泉に落としてしまう。 姫は泣いていると、そこに一匹のカエルが泉の底から現れる。 するとそのカエルはお姫さまに、 「マリを拾ってきてやる代わりに、同じ食器で食べ、同じベッドで寝て、寝食をともにする」ことを約束する。 そのカエルが気持ち悪い姫は、嫌々ながらその約束を果たさなくてはならなくなってしまう… |
このお話しは、象徴的な表現によってアニムス像の変容過程を通し、自己実現に至る過程をみごとに描いています。
まず、お話の冒頭にある
≪まだ願いごとが叶えられた頃のこと≫というのは、幼児期、私たち一人ひとりがまだ家庭に守られている頃、親によってなんでも願いが叶えられた頃の精神状態を表しているのだろうと考えられます。
そのことは、主人公が末っ子という部分にもあらわれていて、甘え上手でわがままに、そして伸び伸びと育つ末っ子であることが、このことを表現するのにピッタリです。
そんなとび抜けて綺麗で器量のよいお姫さまは、森の中のぼだい樹の木の陰にやってきます。森は無意識を表していて、ぼだい樹の木は、お姫さまという自我の成長の可能性を表しています。
そして、その成長の可能性(ぼだい樹)の蔭には泉が湧いています。泉は生命力や、そのエネルギーの象徴です。
つまり、
≪王様のお城のそばには、大きな暗い森があって、一本の古いぼだい樹の木の陰に泉が湧いていました。たまらなく暑い日には、お姫さまは森にやってきて、この涼しい泉のほとりに腰を下ろしました≫
という一連の流れは、幼い子供の自我(お姫さま)が無意識的な状態になって頭がボーッとしているとき(森にやってきたとき)に生命力のエネルギーが湧き出る場所(涼しい泉のほとり)に腰をおろした(気持ちを休めた)という解釈が成り立ちます。
その精神の状態は、ユング博士のいう元型・セルフがいつ活性化してもおかしくない条件がそろったかのように感じられます。
では、そのセルフという元型とはなんなのか、このカエルの王様という童話を分析する前に、まず、セルフについて説明しなければなりません。
それは『人間と象徴』という本の中で、フォン・フランツ博士はこのように説明しています。
「山の松の種は潜在的な形で、その木の未来のすべてを秘めている。しかし、個々の種はあるとき、ある場所に落ちる。そこには土壌や石の質や土地の傾斜、日光や風を受ける程度などいろいろな特殊な要因がある。種の中にある松の潜在的な全体性は、これらの状況に対して、石を避けたり太陽のほうに傾いたりして反応し、その結果、その木の成長が形づくられる。かくて個々の松は徐々に実在化し、その全体性の補足をなしとげ、現実の世界に姿を現す。この実在の木なくしては松のイメージはたんなる可能性であり、抽象的な概念にすぎない。個人の中にあるこのような個性の実現が個性化の過程の目標なのである」
私たちの無意識下に備わっていると仮定されるセルフという元型は、自我を含めた心の全体的な成長へと促す働きを持ちます。そして、カエルの王様にでてくる≪金のマリ≫は、そのセルフを象徴しています。
そして、お姫さまは金のマリで遊び、セルフが活性化したとき、自己実現のための方向付けがなされるのです。
つまりそれは、金のマリを生命力の源である≪泉≫に落としてしまい、それを拾い、醜いカエルが現れるというところで表現されています。この、姫が嫌悪している気持ちの悪いカエルは、いまだ未分化な女性の中の男性的な要素、アニムスを表していて、アニムスとは、女性の中の未知なる男性像のことです。
お姫さま(女性の自我)は、どうしてもこのイメージを受け入れることができず、ひたすら嫌いしますが、そのカエルとは同じお皿で食べ、同じベッドで眠るという約束をしてしまいます。最初、お姫さまはそのことを軽視していて、そんな約束など守るつもりはなかったのが、王様という絶対的な権限を持つ父親に、「約束は守らなければならない」と言われ、そのことを受け入れざるを得なくなってしまいます。
これは、未分化なアニムスが自我に接近してきたことを意味しています。
そして、イヤイヤながらも、自分とは異なる他者、アニムス像と付き合い、
あるとき、怒りが最高潮に達してカエルを壁に叩きつけ、その像と正面から
向き合って真剣に対決することによって、初めてその価値を大きく認め、
受け入れることができるようになるのです。
自我はその像と真剣に向き合ったとき、≪気持ち悪いカエル≫から、
≪優しい目をした王子様≫に姿を変え、大きな変容を果たします。
その後の≪結婚≫は、自我がめでたく自己実現を果たしたことを象徴
しています。
最後にこのお話の一連の流れをまとめると、元型であるセルフが活性化したとき、
カエルの出現という形で自己実現のためのきっかけを作り、方向付けをします。
そして、お姫さまは苦しみながらもそれを果たしていくのです。
の物語は、「自己実現の過程」という人類普遍のテーマをみごとに表していると
考えられるのです。
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